Web制作で独立する、または副業から本格的に開業する。そのときに迷うのが、開業届・青色申告・インボイスの「いつまでに」です。しかも2026〜2027年は、この3つすべてに改正が入っています。
この記事は、Web制作で独立する人に向けて、3つの手続きの期限と、2026〜2027年に変わる点を、国税庁などの一次資料に沿って整理したものです。古い期限のまま書かれた解説も残っているので、自分の手続きの日付を確かめるのに使ってください。
※この記事は2026年10月8日時点で一次資料を確認した一般的な情報で、税務助言ではありません。自分の場合の判断は、税務署や税理士に確認してください。
2026〜2027年に変わること(開業届・青色申告・インボイス)
| 時期 | 変わること |
|---|---|
| 2026年1月1日以後の開業から | 開業届の提出期限が「開業から1か月以内」から「開業した年分の確定申告期限まで」に変わった |
| 2026年分まで | インボイスの「2割特例」が使えるのは、個人なら2026年分の申告まで |
| 2026年10月1日から | 免税事業者から仕入れた場合に取引先が控除できる割合が80%から70%に下がった |
| 2027年分・2028年分 | 個人事業者向けの「3割特例」が新設された |
| 2027年分から | 青色申告特別控除が75万円・65万円・10万円の区分になり、紙で申告すると上限は10万円 |
ここから、手続きごとに見ていきます。
開業届の期限は「確定申告期限まで」に変わった
2026年1月1日以後の開業から
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の期限は、2026年1月1日以後の開業から「開業した日の属する年分の確定申告期限まで」になりました。令和5年度の税制改正によるものです(国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」、所得税法第229条)。
たとえば2026年中に開業した場合、法律上の期限は2026年分の確定申告期限、つまり2027年3月15日です。以前の「開業から1か月以内」のまま書かれている記事もあるので注意してください。
それでも早めに出すほうがよい理由
期限は延びましたが、次の青色申告の承認申請は期限が短いままです。2つを一緒に出しておくと、手続きの漏れを防げます。金融機関によっては、事業用の口座を開くときに開業届の控えの提示を求められることもあります。
副業ですでに出している人
会社員のうちに副業として開業届を出している場合、独立のときに改めて出す必要があるかどうかは、税務署で確認してください。
青色申告の承認申請は「開業から2か月以内」のまま
期限
| 開業した時期 | 青色申告承認申請書の期限 |
|---|---|
| 1月16日以後に開業 | 開業日から2か月以内 |
| 1月1日〜15日に開業、またはすでに事業をしていて翌年から青色にしたい | 青色申告をしたい年の3月15日まで |
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
期限を過ぎると、その年は青色申告ができず、青色申告特別控除を受けられません。開業届の期限が延びたことで、こちらまで後回しにしてしまわないようにしてください。
例:2026年11月に開業した場合
開業届の法律上の期限は2027年3月15日ですが、青色申告承認申請書は開業日から2か月以内です。年明けを待たずに、開業届と一緒に出しておくのが安全です。
青色申告特別控除は2027年分から75万円・65万円・10万円に
| 区分 | 2026年分まで | 2027年分から |
|---|---|---|
| 複式簿記+期限内申告 | 55万円 | 55万円の区分はなくなる(紙で申告すると上限10万円) |
| 複式簿記+e-Tax(または優良な電子帳簿保存) | 65万円 | 65万円(e-Taxが必須) |
| 複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿保存またはデジタルシームレス保存 | ― | 75万円(届出書の提出が必要) |
| 簡易な帳簿 | 10万円 | 10万円(前々年の事業所得の収入が1,000万円を超えると対象外) |
出典:国税庁「【令和9年分確定申告から適用】75万円の青色申告特別控除を適用しましょう」、国税庁 タックスアンサー No.2072
2027年分からは、紙の申告とe-Taxの差が55万円以上になります。2027年分の申告は2028年の春ですが、帳簿のつけ方は年の初めから決まっていきます。会計ソフトで複式簿記をつけ、e-Taxで申告する形に、最初からしておくと困りません。
なお、青色申告特別控除の対象は事業所得(または不動産所得)です。副業の売上を雑所得として申告している場合は使えません。
75万円控除の「優良な電子帳簿」の要件や届出書は「青色申告の75万円控除はいつから?」で詳しく整理しています。
インボイス:登録するか、いつ申請するか
新しく開業した人は「その年の12月31日まで」に申請
新たに事業を始めた個人は、開業した年の中に登録申請書を出せば、その年の1月1日にさかのぼって登録を受けられる特例があります。この期限は土日・祝日でも延びません(国税庁「新規開業者向けページ」)。
ただし、会社員のうちから副業で売上がある場合は「新たに事業を開始した」に当たらないことがあります。自分が当てはまるかは税務署で確認してください。
免税事業者のままなら、取引先の控除は70%に
インボイス登録をしない場合、取引先が消費税を控除できる割合は、次のように段階的に下がります(国税庁「インボイス制度に関するお知らせ(令和8年度税制改正特集)」)。
- 2026年10月1日〜2028年9月30日:70%
- 2028年10月1日から:50%
- 2030年10月1日から:30%
- 2031年10月1日以後:控除できない
保守は毎月続く契約なので、この差も毎月続きます。保守の相手の多くは課税事業者なので、登録するかどうかを見積書の段階で伝えておくと、後からの値下げの相談を避けやすくなります。
登録した場合の納税:2割特例は2026年分まで、2027〜28年分は3割特例
- 2026年分まで:2割特例(納付額を売上にかかる消費税の2割にできる)
- 2027年分・2028年分:3割特例(個人事業者のみ。インボイス登録で課税事業者になった人で、基準期間=2年前の課税売上高が1,000万円以下。確定申告書に適用する旨を書いて使う)
- 2割特例・3割特例を使った翌年は、その年の申告期限までに届出書を出せば、その年から簡易課税を使える
個人の消費税の申告期限は翌年3月31日です。3割特例が終わったあとの方法(簡易課税か一般課税か)も、早めに考えておく必要があります。
3割特例の要件と、簡易課税・免税のままとの比べ方は「インボイスの2割特例が終わったら?」にまとめています。
Web制作で独立する人の期限カレンダー
| いつ | 手続き |
|---|---|
| 退職日の翌日から14日以内 | 国民年金の切り替え、国民健康保険に入る場合の届出 |
| 退職日の翌日から20日以内 | 健康保険の任意継続を選ぶ場合の申出 |
| 開業日から2か月以内 | 青色申告承認申請書(1月16日以後の開業) |
| 開業した年の12月31日まで | インボイス登録申請(新規開業の特例を使う場合) |
| 翌年3月15日まで | 開業届の法律上の期限(2026年以後の開業)、所得税の確定申告 |
| 翌年3月31日まで | 消費税の申告(インボイス登録をした場合) |
開業届と青色申告の承認申請を開業した月のうちに出し、インボイスは年内に方針を決める。この順にしておけば、期限を取りこぼしにくくなります。
期限をおさえたあとの会計ソフトの選び方は「開業届と会計ソフトの選び方」で比べています。
一次資料(確認日:2026年10月8日)
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁「75万円の青色申告特別控除を適用しましょう」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/0026007-003_02.pdf
- 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ(令和8年度税制改正特集)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026004-066_01.pdf
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm
- 国税庁「新規開業者向けページ」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_sinkijigyousha.htm
退職後の健康保険・年金の手続きや住民税の見込みまで含めて、期限つきの一覧にした無料の独立準備チェックリストもお送りしています。自分の開業日を入れて、期限を書き写すところから始めてください。