独立準備

副業のWeb制作、開業届はいつ出す?「出さない方がいい」と言われる理由|2026年以後の期限・青色申告の2か月・扶養・失業給付

会社員のまま、副業でWeb制作や保守を受けている。開業届を出すべきか、出すならいつか。調べると「出さない方がいい」という声も見かけて、迷ってしまう。

この記事は、副業でWeb制作を受けている人に向けて、開業届の期限(2026年以後の開業から変わった点)、青色申告との関係、「出さない方がいい」と言われる理由(扶養・失業給付)が本当に開業届の問題なのかを、国税庁・厚生労働省・日本年金機構・ハローワークの資料で整理したものです。

※この記事は2026年10月26日時点で一次資料を確認した一般的な情報で、税務・法的助言ではありません。自分の場合の判断は、税務署・ハローワーク・加入している健康保険・税理士などの専門家に確認してください。

先に要点

  • 2026年1月1日以後の開業は、開業届の期限が「開業した年分の確定申告期限まで」になった
  • 青色申告の承認申請は「開業から2か月以内」(1月16日以後に開業した場合)のまま。青色で始めたいなら、開業届もこの時期に出すのが自然
  • 「出さない方がいい」と言われる扶養や失業給付の話は、開業届を出したかどうかより、収入の見込みや働き方の実態で決まる部分が大きい

開業届の期限:2026年以後の開業は「確定申告期限まで」

国税庁の「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」では、提出時期を「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」としています。対象は、新たに事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき事業を始めた人で、根拠は所得税法第229条です。以前の「開業から1か月以内」は、2026年1月1日以後の開業から変わりました。

期限は延びましたが、青色申告の承認申請は短いままです。

開業した時期 開業届 青色申告承認申請書
1月1日〜15日 開業した年分の確定申告期限まで その年の3月15日まで
1月16日以後 同上 開業日から2か月以内
すでに事業をしていて、翌年から青色にしたい ― 青色にしたい年の3月15日まで

出典:国税庁 A1-5、A1-8、タックスアンサー No.2090。どちらも、期限が土日・祝日等に当たる場合は翌日が期限です。

承認申請を出し忘れると、その年は青色申告特別控除を受けられません。開業届と一緒に後回しにしないことが大切です。

手続きの期限の一覧と、青色申告に使う会計ソフトの選び方は「開業届と会計ソフトの選び方」にまとめています。

開業届を出せば「事業所得」になるわけではない

副業の所得が事業所得か雑所得かは、開業届の有無では決まりません。国税庁の所得税基本通達35-2の注記では、事業所得かどうかは、その活動が「社会通念上事業と称するに至る程度」で行われているかで判定するとしています。あわせて、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得になる(収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除く)とも書かれています。

青色申告特別控除は、事業所得(または不動産所得)が対象です(国税庁 タックスアンサー No.2072)。保守の月額契約を続けて受け、帳簿をつけている。そうした実態があってはじめて、開業届と青色申告が意味を持ちます。自分がどちらに当たるかは、税務署や税理士に確認してください。

2027年分からの75万円・65万円・10万円の要件は「青色申告の75万円控除はいつから?」で詳しく整理しています。

「出さない方がいい」と言われる理由と、実際のところ

理由1:家族の扶養から外れる

家族の健康保険の被扶養者になっている場合、日本年金機構の案内では、収入の要件は年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満、2025年10月1日以後に認定を受ける19歳以上23歳未満は150万円未満)で、同居なら被保険者の収入の半分未満であることなどです。ここでいう年間収入は、過去の収入ではなく、認定された日以後の年間の見込み収入額とされています。

つまり判定の材料は収入の見込みで、開業届の提出そのものではありません。ただし、事業の収入を売上で見るのか、経費を差し引いた額で見るのかは、この案内には書かれていません。家族の勤務先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に、開業届を出す前に確認しておくのが安全です。

税金の扶養(配偶者控除)は「合計所得金額」で判定します。国税庁 No.1191 では、配偶者の合計所得金額の要件は2026年分から62万円以下(2025年分は58万円以下)です。事業所得は売上から経費を引いた額で、青色申告特別控除を受ければ、そこからさらに差し引かれます。

理由2:失業給付(基本手当)がもらえなくなる

これは、退職してから独立する場合の話です。基本手当は、就職しようとする意思と能力があるのに職業に就けない「失業の状態」にあることが条件で、厚生労働省のQ&Aでも、自営業の人は受給できない例に挙げられています。

ハローワークは「事業を開始した日」だけでなく「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」も区切りとして扱い、事業開始を確かめる書類として、開業届の写しのほかに登記事項証明書や事業許可証なども挙げています。開業届を出さなければ受給できる、という話ではありません。受給中に仕事をした日は、失業認定申告書での申告が必要です。

一方で、独立する人が使える制度もあります。

  • 受給期間の特例(2022年7月1日から):離職後に事業を始めた人は、事業を行っている期間を最大3年間、受給期間に算入しないよう申請できる。事業を始めた日などの翌日から2か月以内に申請する。離職日以前に始めた事業に、離職後に専念する場合も含む
  • 再就職手当:待期期間の満了後に就職、または事業を開始した場合も、要件を満たせば対象になる

会社員のうちに副業で開業届を出している人も含めて、退職後の開業日を決める前に、住所地のハローワークで扱いを確認してください。

理由3:勤務先の副業規定に触れる

副業が認められているかは、勤務先の就業規則の問題です。開業届を出すかどうかで、規定の扱いが変わるわけではありません。厚生労働省は「副業・兼業」のページでガイドラインを公開していますが、何が認められるかは勤務先の規定しだいです。開業届より先に、規定を確認してください。

就業規則で見るところは「会社員のWeb制作副業でWordPress保守を1件取る手順」の手順1に書いています。

いつ出すか:状況別の目安

状況 目安
知人に頼まれた単発の作業だけ 事業と言える程度かを税務署に相談しつつ、まず帳簿をつけ始める
保守の月額契約を持ち、継続して受けている 青色申告にしたい時期に合わせ、承認申請書と一緒に出す
家族の扶養に入っている 出す前に、家族の勤務先の健康保険で事業収入の見方を確認する
退職して独立する 開業日を決める前にハローワークで相談し、その後に開業届・承認申請書を出す
副業で出していて、そのまま独立する 改めて出す必要があるかを税務署で確認する

一次資料(確認日:2026年10月26日)

  • 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
  • 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2090.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
  • 国税庁「所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/09.htm
  • 国税庁 タックスアンサー No.1191「配偶者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
  • 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき」の手続き https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html
  • ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
  • 厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139508.html
  • 厚生労働省「雇用保険受給期間の特例」リーフレット https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000952085.pdf
  • 厚生労働省・ハローワーク「再就職手当のご案内」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/saishuushokuteate.pdf
  • 厚生労働省「副業・兼業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

退職後14日以内・20日以内の手続きから開業届・青色申告の期限までを、期限つきで並べた無料の独立準備チェックリストもお送りしています。自分の退職予定日と開業日を入れて、出す順番を確かめてください。

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