Web制作の見積もりを出すことになった。制作費の合計は出せるけれど、見積書にどんな項目を並べればいいのか、公開後の保守をどう書けばいいのかが決まっていない。
この記事は、個人・フリーランスでWeb制作を受ける人に向けて、見積書に書く項目と、保守の月額を最初から入れた見積書のテンプレートをまとめたものです。初期費用と月額を分ける理由、内訳の書き方、支払条件の書き方、インボイスの登録番号と税の表示まで扱います。
※税の部分は一般的な情報で、税務助言ではありません。自分の場合の扱いは、税理士や税務署に確認してください。
保守は「あとで提案」より「最初の見積書に入れる」
制作だけを見積もって納品し、そのあとで保守を提案すると、お客様にとっては「納品が終わったのに、また費用の話が来た」と受け取られがちです。最初の見積書に、制作の費用と公開後の月額を並べておけば、お客様は「作ったあとに何が必要で、毎月いくらかかるか」を最初から比べて判断できます。
並べるときは、初期費用と月額をはっきり分けます。混ぜて書くと「全部でいくらなのか」「毎月いくらなのか」が読み取れなくなるからです。
見積の段階で保守を入れられなかったときの切り出し方は「納品の後に保守を提案する文面と、断られたときの返し方」にまとめています。
Web制作の見積書に書く項目
| 項目 | 書く内容 | 書く理由 |
|---|---|---|
| 宛名・件名 | お客様の名前、「【サイト名】制作および保守のお見積り」 | 何の見積もりかを一目で分かるように |
| 見積番号・発行日 | 管理用の番号と日付 | 修正版を出したときに区別するため |
| 有効期限 | 例:発行日から30日 | いつまでも同じ条件ではないことを示す |
| 初期費用の内訳 | 作業ごとに数量・単価・金額 | 何にいくらかかるかを説明できるように |
| 月額費用 | プラン名、月額、含む作業と上限 | 公開後の費用を最初から見せる |
| 含まないもの | 別途見積りになる作業 | 「入っていると思った」を防ぐ |
| 税の表示 | 税別か税込か、消費税額 | 毎月の請求で行き違わないように |
| 支払条件 | 初期費用の支払時期、月額の締め日と支払日 | 入金の時期を約束する |
| 前提条件 | 原稿・写真の支給、確認の回数、公開予定日 | 遅れや追加の原因を先に書く |
| 発行者の情報 | 屋号・氏名、連絡先、登録番号(ある場合) | 誰が出した見積もりかを示す |
初期費用の内訳の書き方
内訳は、お客様が「これは何の作業か」を読んで分かる粒度にします。「制作費 一式」だけだと、減額を頼まれたときにどこを削ればいいのかを説明できません。
| 内訳の例 | 単位の例 |
|---|---|
| 構成・設計(ページの構成案、原稿の整理) | 一式 |
| デザイン(トップページ、下層ページの型) | ページ数または型の数 |
| WordPressの構築・コーディング | ページ数 |
| お問い合わせフォームの設置 | 一式 |
| 検索や共有の基本設定(タイトル、説明文、サイトマップ) | 一式 |
| サーバー・ドメインの取得の代行 | 一式(費用はお客様名義の実費として別に書く) |
| 保守開始の準備(バックアップと監視の設定) | 一式 |
サーバーとドメインは、お客様の名義で契約してもらうのが基本です。取得の作業を代行する場合も、利用料はお客様の契約として別に書きます。他の人が作ったサイトを引き継いで保守だけを受ける場合は、現状の確認や止まっていた更新の解消を「保守開始の準備」として初期費用に入れます。
月額の書き方:見積書と契約書で同じ言葉を使う
月額の欄には、プラン名と金額だけでなく、含む作業とその上限を書きます。
- 含む作業の例:本体・プラグイン・テーマの更新(月1回)、バックアップと表示の確認、軽微な修正(月1時間まで)、月次報告(メール)
- 含まないものの例:デザインの変更、ページの追加、原稿の作成、上限を超えた作業
- 月額の発生時期:例「公開した月の翌月から」
- 契約期間:例「1か月ごとの自動更新」
ここで使った言葉は、契約書の「業務の範囲」と同じにします。見積書と契約書で言葉がずれると、どちらが正しいのかでもめる原因になります。金額の決め方は「WordPress保守の費用相場と料金表の作り方」の記事にまとめています。
支払条件は「具体的な日」で書く
月額の支払条件は「毎月末日締め、翌月末日払い」のように、日が特定できる形で書きます。
フリーランス新法では、従業員を使っている発注事業者は、給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める必要があります。厚生労働省のパンフレットでは、「毎月末日締め、翌月末日支払」は認められる一方、「●月●日まで」「●●日以内」という書き方は具体的な日を特定できないため、支払期日を定めたとは認められないとしています。取引条件を示す義務は発注者にありますが、こちらの見積書の段階で具体的な日を書いておけば、発注者が条件を示すときにもそのまま使えます。
税の表示とインボイスの登録番号
税別か税込か、消費税額を分けて書く
金額の欄には、税別か税込かを書き、消費税額を分けて示します。月額は毎月の請求が続くので、最初の書き方がそのまま残ります。
登録番号は、登録している場合だけ書く
インボイス(適格請求書)を交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです(国税庁 タックスアンサー No.6625)。インボイスに書く項目は、請求書などに求められるもので、次の6つです。
- 書類を作る人の氏名または名称と、登録番号
- 取引の年月日
- 取引の内容
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類を受け取る事業者の氏名または名称
見積書はこの請求書とは別の書類ですが、発行者の欄に登録番号を書いておくと、登録している事業者であることを最初に伝えられます。月額の請求書は、一定期間の取引をまとめて記載する方法も認められています(同 No.6625)。
免税事業者のままなら、そのことを見積もりの段階で伝える
登録していない場合は、登録番号の欄を作らず、登録していないことを見積もりの段階で伝えます。免税事業者から仕入れた場合に取引先が控除できる割合は、2026年10月1日から2028年9月30日までの取引で70%です(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。お客様が事業者の場合、価格の話し合いのきっかけになることがあるので、後から伝えるより最初に伝えるほうが誠実です。
保守を入れた見積書のテンプレート
【 】の部分を書き換えて使ってください。
御見積書
【お客様の名前】 御中
件名:【サイト名】制作および保守のお見積り
見積番号:【 】 発行日:【年】年【月】月【日】 有効期限:発行日から【30】日
■ 初期費用(一括)
1. 構成・設計 一式 【金額】円
2. デザイン 【 】ページ 【金額】円
3. WordPressの構築・コーディング 【 】ページ 【金額】円
4. お問い合わせフォームの設置 一式 【金額】円
5. 保守開始の準備(バックアップ・監視の設定) 一式 【金額】円
小計【金額】円 消費税(10%)【金額】円 合計【金額】円
■ 月額費用(公開した月の翌月から)
1. 保守【プラン名】 月額【金額】円
消費税(10%)【金額】円 月額合計【金額】円
含む作業:更新(月1回)、バックアップと表示の確認、軽微な修正(月【 】時間まで)、月次報告(メール)
含まないもの:デザインの変更、ページの追加、原稿の作成、上限を超えた作業(別途お見積り)
■ 支払条件
・初期費用:公開した月の末日締め、翌月末日払い
・月額費用:毎月末日締め、翌月末日払い
・契約期間:1か月ごとの自動更新
■ 前提条件
・原稿と写真は【日付】までにご支給いただく前提です
・デザインの修正は【2】回までを含みます
・サーバーとドメインはお客様名義でご契約いただき、利用料はお客様のご負担です
【屋号】【氏名】
【連絡先】
登録番号:【T+13桁】(登録している場合のみ記載)
見積書を出す前の確認
- 初期費用と月額が、別の欄に分かれているか
- 月額に含む作業と上限、含まないものが書かれているか
- 見積書と契約書で、作業の名前が同じか
- 支払条件が「●日まで」ではなく、具体的な日で書かれているか
- 税別か税込か、消費税額が分かるか
- 登録番号の有無と、登録していない場合の伝え方を決めたか
出典(確認日:2026年10月26日)
- 国税庁 タックスアンサー No.6625「適格請求書等の記載事項」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm
- 厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」パンフレット https://www.mhlw.go.jp/content/001329767.pdf
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